第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
頭を冷やすつもりで、いつもより長く湯に浸かった。
熱い湯を何度も被って、無理やりにでも余計な考えを洗い流す。
そうして完全に落ち着きを取り戻したつもりで、部屋に戻ってきた。
部屋には、すでに風呂から上がったがいた。
旅館の浴衣を着て、濡れた制服をハンガーにかけているところだった。
毎日見ている制服とも、寮での部屋着とも違う。
初めて見るその姿に、思わず見入ってしまう。
髪は後ろでゆるくまとめられていて。
少し大きめの浴衣の襟元から、白い首筋がやけに目立って見えた。
湯上がりのせいか、頬や耳のあたりがほんのり赤い。
(……っ、見すぎだ)
慌てて視線を逸らす。
「あ、おかえり」
俺とは逆に、はいつも通りの顔。
さっきのことなんて、もう微塵も気にしていないらしい。
なんで、残念がってんだよ……俺は。
少しでもあいつに意識してほしい、なんて。
今日何度目かわからないため息が出る。
俺も濡れた制服を干そうと、部屋に足を踏み入れた。
そこで、今日二度目の思考が止まる。
部屋の真ん中に、敷かれた布団が二組。
隙間なんて一ミリもないくらい、ぴったりとくっついて並んでいる。
「……おい」
自分でも驚くほど、低い声が出た。
「なんだ、これ」
「え? お布団だよ」
「そうじゃねぇ……」
ぐっと額を押さえて、もう一度布団を指差した。
「なんで、こんなにくっついてんだって聞いてるんだ」
「あ、なるほど。さっき、旅館の人が敷きに来てくれたんだよ」
はなんでもないことのように答える。
旅館の人が敷いた。
つまり、宿の人からは俺たちが「そういう関係」だと思われているということだ。
男女が一部屋に泊まる。
気を利かせて、布団を密着させて敷く。
そこまではいい。
百歩譲って、宿の勘違いは仕方ない。
問題は――