第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
『僕、興奮するかもしれないのに』
興奮する。
それって、つまり。
(それは、勃つってこと……!?)
私じゃ勃たないと言っていた、五条さんが。
私が一人でしているところを見れば、ちゃんと反応してくれるかもしれない?
そうすれば、私は専属淫魔としての初えっちを無事に達成して、あのものすごい精気をたっぷりといただけるのでは……?
私は、ごくりと唾を飲み込んだ。
恥ずかしい。
死ぬほど恥ずかしい。
でも、私はプロの淫魔だ。
新入りだけど。
契約者さんを気持ちよくさせて精気をいただくのが、私の絶対の使命。
(お仕事……これは、お仕事なんだから……!!)
ぐるぐると限界まで混乱した頭のまま、私はゆっくりと自分のワンピースの裾へと視線を落とした。
「……ま、処女のには、さすがにハードル高いか」
私の葛藤に気づいていないのか、それとも気づいたうえでなのか。
五条さんはあっさりと身を引き、ソファから立ち上がってしまった。
「じゃ、僕はもらったパンでも食べよっかな。任務長引いて、腹ペコなんだよね」
「あ……」
待って。
このまま五条さんが離れていったら、また私は何もできないままだ。
それは、嫌だ。
五条さんに、少しでも私を見てほしい。
私でもちゃんと、五条さんを興奮させられるんだって思ってほしい。
気づいた時には、丸まっていたはずの尻尾が、立ち上がりかけた五条さんの黒い制服の袖に絡みついていた。
「……?」
振り返った五条さんが、少し驚いたように私を見下ろした。
「ぇと……っ」
慌てて引っ込めようとしたのに、尻尾は五条さんの袖を離してくれない。
まるで、私の本音だけが先に飛び出してしまったみたいだった。
心臓が口から飛び出しそう。
でも、言わなきゃ。
プロの淫魔として。
それに、たぶん、それだけじゃなくて。
「……っ、……ぁ」
私は震える手で、自分の尻尾ごと、五条さんの袖をぎゅっと握った。
「一人で、するとこ……っ。……見てて、ください……っ」