第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
案内されたのは、昔ながらの和室だった。
窓際の木枠や座卓には細かな傷が残っているが、部屋はきちんと掃除されていて、古くても清潔さがある。
座卓の上には、館内案内と茶菓子。
壁際には、浴衣とタオルが二人分。
それだけで、ここにと二人で泊まるのだと思い知らされる。
「一階に大浴場もあるって。あ、卓球場もあるよ」
が館内案内の紙を見ながら、声を弾ませた。
「……」
「こういう旅館、ちょっと久しぶりかも」
そう言って、は部屋の中をきょろきょろ見回す。
こっちの気も知らないで、浮かれやがって。
「お風呂行ったあと、卓球しちゃう?」
そう言いながら、は濡れた制服の上着のボタンに手をかけた。
ひとつ、ふたつとボタンを外していく。
水を吸った上着が重そうに肩から落ちて、その下のシャツが見えた。
シャツは濡れて、ほとんど肌に貼りついている。
その白い布地の下に、淡い色の下着が透けて見えた。
「……ッ」
咄嗟に視線を逸らした。
心臓がドクンと音を立てる。
見ちゃいけないものを見てしまった罪悪感。
それをはるかに上回る、ひどく最低な衝動。
(……何考えてんだ、俺は)
自分が嫌になるくらい、身体の方が先に反応していた。
「ん? 伏黒くん、どうしたの?」
が、こちらを覗き込むようにして瞬きをする。
自分の格好に、これっぽっちも気づいていない。
「……お前、な」
「え?」
俺は近くにあったタオルを掴むと、の方へ乱暴に投げつけた。
「わっ……なに?」
「なんでもいいから隠せ。透けてる」
「え……? あ――っ!」
が小さい悲鳴を上げる。
顔を真っ赤にして、慌ててタオルを胸元に当てているのがわかった。