• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**


「……俺は他の宿を探すか、ここのロビーで休む。だから、お前は一人で部屋を使え」

「だ、だめだよそんなの! 伏黒くんだってびしょ濡れなのに。今から他の宿探すなんて。ロビーもダメだよ。絶対風邪ひいちゃう」

「俺は大丈夫だ」

「よくない! それに、そんなことしたら私、申し訳なくて絶対に休めない……!」



は必死な顔で俺を見た。
絶対に譲らないという、頑固な顔。


俺も引く気はなかった。
一部屋で一晩を過ごすなんて、今の俺にはきつすぎる。
あの自販機の前で自覚したばかりの、あの厄介な感情を抑え込める自信なんてどこにもない。



「いいから、俺の言う通りにしろ」

「やだ。伏黒くんがロビーで過ごすなら、私もロビーにいる」

「お前な――」



言いかけて、口をつぐんだ。
ふと周りを見ると、ロビーにいた他の客たちが、ちらちらとこちらを見ている。

まずい。
思ったより声が大きくなっていたらしい。
これ以上、ここで言い争ってる場合じゃない。



「すみません、部屋は――」



こいつ一人で、と言いかけた俺の言葉を遮るように。



「二人で泊まります」



が、先に言い切ってしまった。



「おい、……」

「チェックインお願いします! いいよね、伏黒くん?」



全然、良くないんだが……。
完全に押し切られた。


受付の女性は俺の方へちらりと視線を向けたが、宿帳をこちらへ向けた。



「かしこまりました。それでは、こちらにお名前とご連絡先を……」



はペンを受け取ると、すぐに宿帳へ名前を書き始める。


迷いなく動くペン先。
男女が同じ部屋に泊まる。
その意味を、こいつは本当に1ミリもわかっていない。


俺のことも。
俺が今、どんな気持ちでこいつを見ているかも。


(……何も、知らないくせに)


俺は深いため息を吐いて、の名前の下に自分の名前を書いた。
/ 75ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp