第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
先輩と別れたあと、私は五条さんの家へ向かって歩き出した。
昼間の街は明るくて、人通りも多い。
カフェへ向かった時よりも、空が眩しく見えた。
それなのに、先輩から聞いた話が頭から離れなくて、心だけがどんよりと重たかった。
今日のこと……五条さんに報告しなきゃな。
『祓うかどうかは、ちゃんと調べてから』
五条さんは、そう言っていた。
会社のことを調べ終えたら、五条さんとの契約は切れて。
私は祓われるんだよね。
そう思ったら、胸がきゅっと締め付けられた。
どうしてだろ?
祓われるのが怖いから。
……たぶん、それだけじゃない。
五条さんにもう名前を呼んでもらえなくなるのは、なんだか嫌だった。
意地悪に笑われるのも、からかわれるのも、本当は全然嬉しくないはずなのに。
いつか会えなくなるかもしれないと思うと、胸の辺りがおかしい。
(……これも、五条さんの精気のせい?)
そんなことを考えているうちに、いつの間にか五条さんの部屋の前まで戻ってきていた。
鍵を取り出し、玄関を開ける。
五条さんはまだ帰ってきてないらしい。
それもそうか。
まだお昼過ぎだもんね。
ほっとしたような。
ちょっと、がっかりしたような。
「……ただいま、でいいのかな」
誰もいない部屋に向かって、小さく呟く。
もちろん、返事はない。
私は手に提げていた小さな紙袋を、ダイニングテーブルの上にそっと置いた。
カフェを出る時、結局買ってしまった焼きたてのパン。
五条さんにも食べてもらおうと思って……いや、別に深い意味はない。
ただ、美味しかったから。
契約者さんとの円滑な関係を築くための、業務上必要な差し入れってやつ。
「……食べてくれるといいな」
リビングのソファに腰を下ろし、スマホを取り出す。
画面に新しい通知が届いていた。
あ、先輩からだ。
『専属契約、頑張りなさいよ! また相談乗るからね♡』
先輩……優しい。
やっぱり、頼れる大人の淫魔だ。
一生ついていきます。
すると、すぐにもう一通のメッセージとURLが送られてきた。