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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**


「前に、精気の使い道を探ろうとした淫魔が何人か、そこへ忍び込んだらしいの」

「その人たちは、一体何を見たんですか?」

「わからないわ。だって……それきり、誰もその人たちを見かけてないんだもの」

「そ、そんな……」



先輩の言葉に、私は思わず息を呑んだ。
美味しいはずのランチプレートが、急に味のしない砂みたいに感じた。



「いい、新人ちゃん。会社には、会社のやり方がある。私たちは言われた通りに精気を集めて、決められた分を提出する。それでお給料をもらう。……それだけよ」

「……」

「せっかく専属契約を結べたんだし。これ以上余計な詮索はしない方がいいわ。これは先輩からのアドバイス」

「……わ、わかりました」



私はこくりと頷いた。

本当は、わかったとは言えなかったけど。


地下の管理区画。
会社に集められる精気の行方。
使い道を探ろうとして、いなくなった淫魔たち。

聞けば聞くほど、当たり前だと思っていた会社のことが、急に怖いものみたいに思えてきた。



「あ、すみませーん。お水もらえますかー?」



近くを通りかかった店員さんに、先輩が声をかける。


そのあまりに平然とした横顔を見て、これ以上は聞くのをやめた。

先輩はきっと、ずっとこうやって働いてきたのだ。
見ないふりをして。
聞かないふりをして。
それが、淫魔として生き残る方法なのだと。


私は、淫魔だ。

どこから生まれてきたかもわからない。
ただ、人間から精気をもらうための存在で。
それが仕事で。
それが当たり前だと教わってきた。


でも。
もし、その当たり前の先に、誰かが苦しんでいるのだとしたら。

私たちが集めた精気が、何かよくないものに使われているのだとしたら。



「……」



五条さんの顔が、ふと頭に浮かんだ。

意地悪で。
笑いながら、さらっと怖いことを言って。
私じゃ勃たないなんて、ひどいことを言う人で。

だけど、あの人はたぶん、私には見えていなかったものを見ているんだろう。


一口、キッシュを口に運ぶ。
けれど、さっきまで美味しかったはずのそれは、なかなか喉を通ってくれなかった。
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