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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**


ホッと息を吐いて、目の前のパンをぱくりと口に運んだ。


あ、焼きたてだ。
おいしい。
昨日の夜から緊張で何も食べられなかったから、五臓六腑に染み渡るぅ。

お土産に五条さんにも買って……じゃなくて!
ちゃんと協力者として役に立たないと、私は祓われてしまう!



「そ、そういえば先輩……」

「ん?」

「私、昨日は気絶しちゃって最後まで見届けられなかったんですけど……精気をいただいたあと、相手の人間ってどのくらい疲れるものなんですか?」

「んー? まあ、人によるけど。普通はちょっと眠くなるとか、翌朝だるいとか、そのくらいよ」



その程度で、五条さんが「被害」と言うのだろうか。
五条さんの話だと、体調を崩して入院した人もいたらしい。



「じゃあ、命に関わることは……」

「普通はないわよ。精気を人間から必要以上に取ってしまうことは、会社のマニュアルでも禁止されているし」

「ですよね……。あと……私たちがいただいた精気のうち、三分の一は会社に提出する決まりじゃないですか」

「ええ、そうね」

「あの集められた精気って、会社は何に使ってるんでしょうか?」



私がそう聞いた瞬間、さっきまで笑っていた先輩の口元から、スッと笑みが消えた。



「せ、先輩?」



周囲を警戒するように視線を巡らせると、先輩はフォークを置き、私にだけ聞こえるような小さな声で囁いた。



「……新人ちゃん。そのこと、絶対に部長に聞いちゃダメよ」

「えっ……」

「私も詳しくは知らないけど。ただ、提出された精気は全部、地下の管理区画に送られてるって聞いたことがある」



地下の管理区画。

その言葉に、私は自分の職場を思い浮かべた。


私たちが所属する淫魔の派遣会社は、都内の大きなオフィスビルの一角にある。
強力な結界で人間の目から隠されたそのフロアは、デスクやパソコンが並ぶ、ごく普通の会社みたいな場所だ。


だけど、その奥にあるエレベーターには、私のような下っ端には絶対に押せない、『地下』へ続くボタンがある。

それでも、エレベーターの前を通るたび、扉の向こうから冷たくてどす黒い気配が漏れている気がした。
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