第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「ち、ちちち、違います!! 全然違います!!」
「新人ちゃん、動揺しすぎよ。尻尾、隠しきれてないから」
先輩に指摘されてハッと足元を見ると、隠していたはずの尻尾が少しだけ具現化して、バタバタと暴れていた。
私は慌てて尻尾をワンピースの中に隠す。
「と、とにかく違います! ご、ごじょ、いや契約者さんは……その、ただの背が高くて、いい匂いがしてちょっと意地悪なだけの……ふ、普通の人間です!」
私が必死にそう言い張ると、先輩は呆れたような、でも本気で心配しているような顔で私を見つめた。
「……本当に大丈夫なの? もし脅されたり、無理やり専属にさせられたりしてるなら――」
「お待たせいたしました〜。本日の特製ランチプレートになります」
絶妙すぎるタイミングで、エプロン姿の店員さんが色鮮やかな料理を運んできた。
テーブルの上に、おしゃれな木製プレートが二つ置かれる。
湯気の立つトマトクリームスープに、熱々のキッシュ。
焼きたてのパンのいい香りがふわりと広がった。
(た、助かった……!!)
私はここぞとばかりにパンッ!と両手を合わせた。
「わぁっ! す、すごい! 美味しそうですね!」
「ちょっと、新人ちゃん……」
「さ、食べましょ食べましょ! 冷めちゃうともったいないですよ!」
私は先輩の話を強引に遮って、逃げるようにフォークを手に取った。
「……はぁ。あんたって子は、ほんとに」
先輩は今日何度目かわからないため息をつくと、それ以上聞くのは諦めてくれたらしく、ナイフとフォークを手に取った。
「まあいいわ。とりあえず、何かあったらすぐに私に言うこと。いいわね?」
「はい! ありがとうございます、先輩!」
「ほんとにわかってるのかしら。……あ、このキッシュ美味しい」
先輩の雰囲気が少しだけ和らいだのを見て、私はこっそりと胸を撫で下ろした。
よかった。
少なくとも今は、これ以上追及されずに済んだみたいだ。