第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「契約者さんは、そういう『清純そうなの』を、脱がすのが好きなのかしら?」
「ええっ!? ぬ、脱がすって……そんな……!」
「そうじゃなきゃ、服なんてプレゼントしないでしょ。わざわざ自分好みの服を着せて、それを自分の手でぐちゃぐちゃにするのが好き、みたいな」
「ち、違います! そういうのじゃ全然なくて!」
「恥ずかしがることないじゃない。それで、初えっちはどうだったの?」
からかうように笑う先輩の前で、私は出されたお冷を一気に飲み干した。
空になったグラスをテーブルに置いて、深呼吸を一つ。
「……実は、えっちはしてないんです」
「……ん?」
先輩の持っていたフォークから、サラダのミニトマトがポロリと落ちた。
先輩は目を瞬かせ、まるで日本語が通じない相手を見るような顔をしている。
「えっちしてない? 専属契約を結んだのに?」
「はい……私じゃ勃たないから無理って言われちゃって」
「……はい?」
「だから……」
「え、待って待って。じゃあどうやって精気の供給を受けたの?」
いつも余裕たっぷりの先輩が、完全に混乱している。
やっぱり、こんなことありえないんだ。
「……その、キスだけで、最初の供給をしてもらったんです」
自分で言いながら、また昨日の五条さんとのキスを思い出して俯いてしまう。
でも、ここからが今日一番相談したかった本題なのだ。
私は身を乗り出して、先輩に訴えかけた。
「先輩! 私、キスだけで気絶しちゃったんです!」
「……キスだけで、気絶?」
「致死量かと思うくらい精気を流し込まれたんですよ! あと、朝起きたら制服も捨てられちゃってて!」
「……」
「どうしよう先輩! 制服紛失なんて、絶対に始末書ですよね!?」
一気にまくし立てる私を見て、先輩は完全に固まっていた。
やっぱり、制服を勝手に捨てるなんて非常識ですよね。
部長になんて説明したらいいんだろう。
「……はぁ〜〜〜〜っ」
先輩は今日一番の深いため息をついて、頭痛をこらえるみたいにこめかみを押さえた。