第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
着替えを済ませて、寝室にあった大きな鏡の前に立つ。
鏡の中では、白いワンピースの背中から羽がそのまま生えているように見えた。
私たち淫魔の角や羽、尻尾は精気で形を保っているから、服くらいなら自然とすり抜けてくれる。
でも、外出する時は引っ込めておくのが基本ルールだ。
意識を集中させて、頭の角と背中の羽を身体の中へ引っ込める。
最後に尻尾もしまえば、鏡に映っているのは、どこからどう見ても普通の人間の女の子だった。
「よし……これで出かけられる」
私は五条さんの家の鍵を手に取り、待ち合わせのカフェへ向かった。
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教えてもらったカフェのドアを開けると、カランと涼しげなベルの音が鳴った。
店内を見渡すと、窓際の席からひらひらと手を振る姿が見えた。
「新人ちゃん、こっちこっち!」
「先輩……!」
私は小走りで先輩の席へ向かった。
今日はお休みだという先輩は、タイトなリブニットにスリットの入ったスカートという、大人の色気が漂う服装だった。
胸元にはサングラスがかけられていて、相変わらずセクシーで綺麗だ。
まさに「いい女」という言葉がぴったりで、思わず見惚れてしまう。
「お疲れ様! いやー、まさかいきなり専属契約が決まるなんてね。ほんとすごいよ!」
「いえ、私自身も何が起きたのか、まだよく分かっていなくて……」
向かいの席に座ると、先輩はふふっと笑って私の全身を眺めた。
「それにしても、その服。すっごく似合ってるわね。可愛いじゃない」
「ありがとうございます。これ、契約者さんからいただいたんです」
「へえ!」
先輩は少し目を丸くして、それから感心したように深く頷いた。
「初日から服のプレゼントなんて、マメでいい契約者さんじゃない。変な人に当たったらどうしようかと思ってたけど、安心したわ」
「そ、そうですね……?」
プレゼントというか……。
会社の制服を勝手に捨てられた結果なのですが。