第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
第二条は『精気の供給について』。
ご丁寧に推奨される供給方法の図解まで載っている。
それがあまりにも……その、えっちというか、刺激的すぎて。
研修でも教わっているから、初めて見るわけじゃないんだけど。
「なになに? なんて書いてあんの?」
五条さんがひょいと手を伸ばしてきた。
長い腕のせいで、ソファから腰を上げてもいないのに、一瞬でバインダーまで届いてしまう。
「み、見ないでください! 私が読みますから!」
「いいじゃん、契約者なんだし。僕にも知る権利があるよ?」
「そ、それはそうですけど……っ!」
私が抵抗する間もなく、五条さんがバインダーの端を掴んだ。
引っ張り返そうとしたけれど、力では全然敵わなくて、あっさりとマニュアルは五条さんの手の中へ奪われてしまう。
「えーっと。『精気の供給について』……ふむふむ。契約者は、定期的に精気を供給する義務を負う。……なるほどね」
「あ、あの……!」
私は、たまらず口を挟んだ。
「さっき五条さんは、精気を取って人に害を与えるなら、いけないことだって……」
「ん? ああ。でも、専属契約を結んだんだから仕方ないでしょ」
五条さんは悪びれる様子もなく、あっさりと肩をすくめる。
「それに、僕は普通の人間よりずーっと精気が多いと思うよ。にちょっとやそっと吸われたくらいじゃ、ぜーんぜん疲れないから大丈夫」
そう言って、五条さんはページをめくり、私が一番隠したかった『推奨される供給方法』の項目へ視線を移した。
「『なお、効率的な精気の抽出には、粘膜接触、および体液の交換が強く推奨される』……へえ?」
そんな淡々と読み上げないでください!
顔から火が出そうで、誤魔化すように後ろで尻尾をぐるぐると丸めていると、五条さんがバインダーから顔を上げた。
「これってつまり……セックス、ってことだよね?」
「っ、ひゃっ……!」
はっきりと口に出されて、変な声が出てしまった。
「何恥ずかしがってんの。淫魔でしょ?」
「そ、そうですけど……!」
そうだけど。
淫魔なんだけど。
いざ自分がするのだと思うと、心臓が口から飛び出しそうだった。