第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「――」
そう呼ばれた瞬間、心のずっと深いところが揺れた気がした。
たった今、初めてもらった名前のはずなのに。
なぜか、すっと馴染む。
「……、ですか?」
「そう。」
五条さんがもう一度その名前を呼ぶと、背中に隠していた尻尾が勝手にぴんと立つ。
「っ、な、なんで尻尾が……!」
「気に入った?」
「わ、わかりません。でも……変ではないです」
「そ。変じゃないならよかった」
「はい……」
。
もう一度、心の中でその名前を呟いてみた。
やっぱり、不思議なくらい呼びやすい。
自分のものではないはずなのに、最初からそこにあったみたいだった。
「どうして、この名前なんですか?」
「……なんとなく、かな。呼びやすいし、君っぽい」
「そうですか……?」
自分ではよくわからない。
でも、五条さんがそう言うなら、きっとそうなのかもしれない。
私はこくりと頷いて、改めて五条さんを見上げた。
「では、今日から私は五条さん専属の淫魔、です。よろしくお願いしますね、五条さん」
「よろしく、」
その声で呼ばれると、また尻尾が勝手に揺れた。
なんか変だ。
私は今日、初めて五条さんに会ったはずなのに。
初めて名前をもらったはずなのに。
自分の胸に手を当ててみる。
どうしてか、この人に名前を呼ばれると胸がドキドキする。
これって……――。
不整脈……?
こうして。
新人淫魔としての私の初仕事は、成功したのか失敗したのかよくわからないまま。
専属契約者――五条悟さんと私の、奇妙な同居生活が始まった。