第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「嬉しそうだね」
「はい!」
思わず、食い気味に答えてしまった。
だって、専属契約だ。
初仕事で失敗して。
祓われそうになって。
なんかスパイみたいなことをさせられそうになっているけれど。
嬉しいものは嬉しい。
さっきから口元が緩んでしまう。
私は嬉しさで揺れる尻尾を押さえながら、改めて五条さんを見上げた。
「五条さん」
「ん?」
「ありがとうございます」
さっきまで怖くて、意地悪で、祓われるかもしれないと思っていた人。
でも、この人は私を今すぐ消さないと言ってくれた。
専属契約者さんになってくれると言ってくれた。
だから、ちゃんとお礼を言わなければと思った。
「私、頑張りますね。立派にお仕事します」
そう言うと、五条さんがほんの一瞬、私から顔を逸らしたように見えた。
あれ?
喜びすぎたかな?
そうだよね、五条さんはお仕事のために契約しただけだもんね。
「じゃあ、専属淫魔ちゃん。君、名前は?」
「……名前?」
急に聞かれて、ぽかんとしてしまった。
名前。
そういえば、私……名前なんかあったっけ。
「会社ではなんて呼ばれてんの?」
「会社では……新入り、とか。あ、部長には管理番号で呼ばれています」
「番号?」
「はい。私は217番です」
「呼びづらいし、なんか囚人みたいだな。うーん……じゃあ、僕が名前つけてあげるよ」
「名前をですか? 五条さんが、私に? 専属契約者さんは、名前までつけてくれるんですか?」
「普通は知らないけど、僕はサービス精神旺盛だから」
「おお……」
なんだか、すごい。
専属契約だけでも特別なのに、名前までつけてもらえるらしい。
私は敬意を表すために、その場に片膝をつき、しゃきんと背筋を伸ばした。
「五条さん、お願いします」
「では、発表しよう」
五条さんはやけに厳かな声でそう言うと、わざとらしく咳払いをした。
それから、もったいぶるように少しだけ間を置いて。