第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「じゃあ、私はどうすれば……」
「とりあえず、僕のところにいなよ」
「五条さんのところに?」
「君が勝手に誰かから精気を取らないように。あと、会社の情報、ちょっと流してもらうために」
「それ、スパイじゃないですか!?」
「協力者って言ってよ」
「同じです!」
どう考えても、初仕事の範囲を超えている。
部長。
先輩。
私、どうしたらいいのでしょうか。
会社のことを勝手に話すなんて、たぶんよくない。
怒られるかもしれない。
裏切り者だと思われるかもしれない。
でも、五条さんの言うことも間違ってはいなかった。
このまま帰ったら、私はきっとまた別の契約者さんのところへ派遣される。
そして、また精気をいただこうとする。
それが悪いことなら、私はちゃんと知らなければいけない気もした。
「……断ったら?」
おそるおそる尋ねると、五条さんはにこりと笑った。
「今すぐ祓う」
「ひぃっ!!」
だめだ。
選択肢があるようで、全然ない。
この人、やっぱり怖い。
「で、でも……私が帰ってこなかったら、部長や先輩たちが不審に思います。初仕事なのに、戻ってこないなんておかしいですし」
「それもそうだねぇ」
五条さんは少し考えて、何か思いついたようにポンと手を叩いた。
「契約って、一つしかないの?」
「え?」
「ほら。今日みたいに一回だけ精気を取って帰る契約以外に、長期契約とか、専属契約とか。そういうのないわけ?」
「あ、あります」
「じゃあ、それで報告すればいいじゃん。僕が君を気に入ったから、専属契約に切り替えましたって」
「いいのですか!」
つい声が弾んでしまった。
専属契約。
それは、限られた淫魔しか結べない特別な契約だ。
先輩たちの中でも、綺麗で色気たっぷりで、契約者さんを骨抜きにしてしまうような人だけが結ぶものだと聞いていた。
新人の私には、まだずっと先の話だと思っていたのに。
それに、五条さん専属になれば、私はもう他の人に害を与えることもなくなる。
部長にも、先輩にも、専属契約になりましたって報告できるし。
もしかしたら、お給料も上げてもらえるかも。
そう考えたら、尻尾がぴょんぴょん弾み始めた。