第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「今日が初仕事って言ったっけ? てことは、君はまだ何もしてないんでしょ」
「でも、これからするつもりでした」
「真面目か」
五条さんはふぅとため息を吐いた。
それから、私の前にしゃがみ込む。
急に目線が近くなって、どきっとする。
目隠しで、目は見えないけど……。
「今すぐ祓うとは言ってない」
「……え?」
「君、どう見ても事情わかってなさそうだし。それに……」
五条さんの指が、私の足元でしょんぼり垂れていた尻尾の先をちょんとつついた。
「ひんっ」
「こんなに反応良くて、しょげる悪魔、ちょっと珍しいでしょ」
「尻尾、勝手に触らないでください!!」
尻尾を引っ込めると、五条さんの口元がほんの少しだけ緩んだ。
「だから、とりあえず保留」
「保留……?」
「そ。祓うかどうかは、ちゃんと調べてから。他にも淫魔がいるらしいし。それに……君を祓って終わり、って話でもなさそうだからね」
五条さんはそう言って、よいしょと立ち上がった。
それは……。
つまり、今日は逃がしてくれる……ということなのだろうか。
目の前が、ぱぁっと明るくなった気がした。
よかった。
帰れる。
部長には怒られるかもしれないけど、祓われるよりはずっといい。
「五条さん、じゃあ、私はこれで――」
「何言ってんの? 帰っていいよとは言ってない」
「へ?」
あ、あれ?
さっきの聞き間違いだったかな?
五条さんはにこりと笑って、私を見下ろしていた。
「だって、このまま帰しても、君、明日また別の人間のところに派遣されるんでしょ」
「そ、それは……そうですね」
「で、精気を取ろうとする」
「お仕事なので……」
「だから、他の被害を出さないためにも帰さないよ」
帰さないって……。
怖い。
この人、さらっと笑って言うから余計に怖い。