第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
「君が最近世間を騒がせている悪魔……ね。人間から精気を奪ってるってことでいい?」
「悪魔じゃなくて、淫魔です! それに、奪うなんて人聞きの悪い……。ちゃんと契約したうえで、いただくんです」
「同じじゃない?」
「違います!」
そこは大事なところだ。
私たちは、勝手に人間を襲ったりしない。
きちんと契約を交わして、合意のうえで精気をいただく。
……会社からは、そう教わった。
「それに、命までは取りません。少し疲れるだけです」
「少し、ねぇ」
「はい。たぶん」
「たぶんなんだ」
「わ、私は今日が初仕事で……まだ精気をいただいたことないんです。だから、どのくらい疲れるのかわからないんです」
「そうなの? てか、淫魔って君以外にもいるの?」
「はい。素晴らしい先輩がたくさんいます」
私は胸を張って答えた。
先輩たちは、みんな綺麗で、色っぽくて。
きっと、男の人の理性だって簡単に溶かせるのだろう。
もうとっくに精気を持ち帰っているに違いない。
そうだ、私も早く仕事を遂行しなきゃ……。
私はおそるおそる、五条さんの顔を見上げる。
「あの……」
「なに?」
「五条さんは、私と、その……気持ちいいことをする気は……」
「ないよ」
「ない!?」
あまりにもあっさりと言われて、思わず声が裏返った。
「ど、どうしてですか!?」
「どうしてって……」
五条さんは少し困ったように、白い髪をくしゃりとかいた。
それから、なんでもないことみたいに言う。
「僕、君のこと祓わないといけないからさ」
「は、祓う……?」
祓う。
それは、つまり。
淫魔である私を、消すということだろうか。
「私を……殺すってことですか?」
「まあね。被害が出てるなら、僕はそういうのをどうにかする側だから」
「被害……」
その言葉が、胸の奥に小さく刺さった。