第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
頭の角。
背中の羽。
抱きしめた尻尾。
会社支給の、えっちな黒い服。
上から下まで遠慮なく眺められて、居心地が悪い。
「な、なんですか……」
「ふーん、なるほどね」
何がなるほどなのか、全然わからない。
「悪魔って、本当に角とか生えてるんだなって」
「ひゃっ」
五条さんが不意に、私の角に軽く触れた。
「硬いんだね、これ」
「角なので……」
次に、その手が背中の羽へ伸びて、羽の先をそっと摘ままれる。
「羽も本物? ドンキで買ったとかじゃなくて?」
「なっ!? 本物です!」
「へえ。じゃあ、飛べるんだ?」
「もちろんです」
そう得意げに答えると、胸に抱えていた尻尾の先が五条さんの方へぴくりと動いた。
「これも本物?」
五条さんが尻尾の先を指でつまんだ、その瞬間。
「……っ、ひゃん!?」
慌てて自分の口を押さえる。
今、なんかぞわぞわってした。
変な声出ちゃった。
は、恥ずかしい……。
「尻尾、敏感なんだね」
「び、びっくりしただけです!」
「へえ。じゃあ、もう一回」
「だめです!!」
尻尾を背中の後ろに隠すと、五条さんはケラケラと笑っている。
うぅ、何この人。
ひどい。
この人、絶対に意地悪だ。
今のところ笑われてしかない。
こんな人から、本当に精気をもらえるのだろうか。
失敗したら、部長に怒られる。
せっかく教えてくれた先輩も呆れさせてしまう。
それに、精気をもらえなければ、私は――。
(……どうなるんだっけ)
思い出そうとしても、頭の中にぽっかり穴が空いたみたいに何も出てこない。
その時、五条さんの笑い声がふっと止まった。
顔を上げると、彼は何かを考えるように顎へ手を添えている。