第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
とりあえず言い切った!
こ、このあとは……?
先輩、このあとはどうしたら!?
私はぎゅっと目を瞑って、目の前の契約者さん――五条さんの反応をまずは待った。
会社の研修では、ここで男の人は私に理性を溶かされて、めろめろになるはずだった。
だが、いくら経っても何の反応も返ってこない。
部屋の中に静寂が落ちる。
え。
もしかして、変だった?
やっぱり噛んだから?
それとも「気持ちいいことしましょ」の言い方が棒読みだった?
部長。先輩。
ごめんなさい。
私、いきなり失敗したかもしれません。
「あ、あの……」
この空気に耐えきれなくて声をかけたが、返事はない。
五条さんは俯いたまま、肩を小さく震わせている。
どうしたんだろう。
もしかして、具合悪いとか?
不安になって、私は尻尾をぎゅっと掴んだ。
「だ、だいじょ――」
「……っ、ぷ」
えっ?
「あーっ、はっはっはっはっ!!!」
五条さんが、突然お腹を抱えて爆笑し始めた。
長い足をバタバタさせて、本気でツボに入ったように笑っている。
「えっ、ちょ、えっ!?」
「ひぃーっ、ごめ、っ、あははははっ! ちょっと待って。無理」
「む、無理……?」
「だって君、登場から全部失敗してるじゃん」
「ぜ、全部!?」
「……っ、あーお腹痛いっ。ひぃーっ」
五条さんは、まだ肩を震わせて笑い続けている。
恥ずかしすぎて、顔が熱くなった。
違う。
こんなはずじゃなかったのに。
今頃は、契約者さんの理性をとろとろに溶かして、精気をもらうはずだったのに。
自分の不甲斐なさが悔しい。
それに、五条さんもそんなに笑わなくてもいいのに。
じわりと、目の奥が熱くなる。
泣いたらだめだ。
契約者さんの前で泣いちゃだめ。
でも、泣いちゃだめだと思うほど、涙が勝手に滲んでくる。
「……わ、笑わないでくださいよぉ」
「ごめんごめん。だって、悪魔っていうから、もっとこう……」
五条さんは口元に笑いを残したまま、こちらに近づいてきた。
私の前で足を止めると、少し身を屈めて、まじまじと私を覗き込む。