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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**


暗い。
目が回る。


黒い影に引きずり込まれる直前、私は必死にさっきの言葉を頭の中で繰り返した。

微笑む。
甘く名乗る。
そして、余裕たっぷりに。

こんばんは。
あなたの精気をいただきに参りました。
今夜は、私と気持ちいいことしましょ。


大丈夫。
できる。

私は淫魔。
立派な淫魔。



――の、はずだった。


次に目を開けた時、私は知らない部屋の床に、思いきり尻もちをついていた。



「いっ……たぁ……」



情けない声が漏れる。

羽は片方だけ変な方向に曲がっているし、尻尾は足に絡まっている。
おまけに、さっきまで完璧に練習していた台詞は、頭の中から綺麗に吹き飛んでいた。


最悪だ。
初仕事なのに、登場から失敗した。


視線を感じて顔を上げると、部屋の奥に男の人がいた。

白い髪。
黒い目隠し。
長い手足。


ソファに座ったまま、片手にスマホを持って、こちらを見ている。
目隠しをしているのに、なぜか目が合ったような気がした。

この人が、五条悟さんなんだろうか。


急いで立ち上がろうとして、また尻尾を踏んだ。



「いっ、た……!」



男の人は私の登場に驚いたのか、固まっている。

ま、まずい!
引かれている!
えっと、最初はなんだっけ……?


背筋を伸ばして。
羽を広げて。
尻尾をどうにか足からほどいて。

精一杯、余裕があるふりをして。



「こ、こんばんは。あなたの……えっと、せ、精気をいただきに参りました」



噛んでしまった。

先輩。
ごめんなさい。

私は心の中で謝りながら、それでも最後まで言い切った。







「今夜は、私と気持ちいいことしましょ!」









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