第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**
下もひらひらしたフリルが申し訳程度についているだけで、裾を引っ張っても全然安心できない。
ほとんど下着と変わらない。
少し動くだけで、お尻がはみ出しそうだった。
おまけに足には、太ももにぷにっと食い込むえっちなガーターベルトと網タイツまでついている。
「どうせ脱いでしまうんだから関係ない」と先輩たちは言うけど、私は露出が多くて恥ずかしい。
初仕事。
大きい契約。
緊張で、心臓がどくどくと忙しなく脈打っていた。
その時、契約書の文字が淡く光る。
黒い紙の上に、新しい文字が滲むように浮かび上がった。
――召喚時刻、深夜零時。
「時間ね。いい? 新人。最初が肝心よ」
「はい」
「相手の前に出たら、まず微笑む」
「はい」
「次に、甘く名乗る」
「はい」
「それから、余裕たっぷりにこう言うの」
先輩は片手を頬に添えて、妖しく目を細めた。
その姿は、惚れ惚れするくらい綺麗でえっちだった。
「こんばんは。あなたの精気をいただきに参りました――ってね。ほら言ってみて」
「こんばんは。あなたの……精気をいただきに参りました」
「今夜は、私と気持ちいいことしましょ」
「こ、今夜は私と……き、きもち……」
「こら、恥ずかしがんないの」
「は、はい!」
背筋を正した瞬間、足元に黒い円が広がった。
床に落ちた影が、まるで穴のように深く沈んでいく。
羽の先がぞわりと震え、尻尾が勝手に丸まった。
「え、待っ……心の準備が」
「もう遅いわよ」
「先輩!」
「いってらっしゃい。ちゃんと精気、もらってくるのよ」
先輩の声が遠くなって、身体がふわりと浮いた。