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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第4章 【五条悟】勿忘草の悪魔**


そもそも私は、自分の気持ちを落ち着かせるだけで精一杯なのに。
相手の理性を溶かすなんてできるのだろうか。

でも、「できませんでした」では済まされない。


目が覚めた時から、私はここにいた。
名前もなくて、記憶もなくて、ただ「お前は淫魔だ」と教えられた。

だから、淫魔にならなければいけない。
そうしないと、私はここで生きていけない。



「それにしても、初仕事でずいぶん大きな契約を引き当てたわね」

「大きい、ですか?」

「契約者の精気が強い。こんな大口案件、普通は新人に任せないんだけど」

「で、でも……部長直々の命令でして」

「部長が?」



先輩が訝しげに、私の手元を覗き込む。


そこには、黒い紙でできた契約書が浮かんでいる。
紙と言っても、触れると水面みたいに揺れる、不思議なものだ。

一番上には、契約者の名前が白い文字で浮かんでいた。



「ごじょう、さとる……さん」



口の中で、その名前を転がしてみる。

初めて聞く名前のはずなのに、なぜか引っかかる。
けれど、それがどうしてなのかはわからない。



「とにかく、相手は一筋縄じゃいかないはずよ。気を抜いたら、あなたの方が食べられるかもしれないわ」

「食べられる!?」

「ま、それでも男は男よ。精気が強いってことは欲も強いってこと。ちょっと胸でも見せれば、ちょろいわよ」

「む、胸見せるんですか!?」

「今更何言ってんの。精気をもらうにはそれ以上のことをするのよ」

「そ、そうですけど……」



私はもう一度、鏡を見た。


会社支給のやたら布面積が少ない黒い服。

胸元が大きく開いたビスチェは、少し身じろぎするだけでずり落ちそうだし、お腹はすっかり丸出し。
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