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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**


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二人が眠る高専の寮から遠く離れた、深く淀んだ山奥の廃寺。

じっとりと肌にまとわりつくような濃密な呪力の気配が、黒い泥のように床を這い回っていた。


ポタリ、ポタリ。


天井から滴り落ちる赤黒い液体。
それが床に血溜まりを作る中、暗闇の奥で何かがゆらりと蠢いた。

羽のような、ボロボロの着物のようなものを引きずりながら、それは首を不自然な角度で傾ける。



『……あ、ァ……』



人間の女に似た、けれど明らかに異なるその口元が、ひしゃげたように吊り上がった。


十年間、自分が縛り付け、ずっと見張っていたはずの『印』が。
今夜、ほんの一瞬だけ揺らいだ。


封じたはずの声が。
奪ったはずの声が。

別の誰かの名を呼んだのを、聞き逃すはずがなかった。


濁った両眼が、暗闇の中でぎらりと光る。



『アァ……ァ、ア……』



赤子の泣き声にも、鳥の呻きにも似た声が漏れた。


赤黒い血溜まりに、黒い羽が一枚落ちた。
水面が揺れた瞬間、姑獲鳥の背中が不自然に盛り上がり、裂けた背中から漆黒の翼が滲み出す。


姑獲鳥は翼をゆっくりと広げ、月明かりを塗り潰す。



『……みィ……つケたァ……』


『……ワたシノ……カわイい、こォ……』



そして、廃寺の闇を抜け、夜空へと飛び立った。




















𓂃 君に響くカンパニュラ 𓂃


── to be continued.
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