第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**
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どれくらい時間が経ったのか分からない。
部屋の中は、さっきまでとは嘘みたいに静かだった。
聞こえるのは、俺の腕の中でが立てる規則正しい寝息だけ。
俺のTシャツを着て、身体を小さく丸めて眠っている。
袖が少し余って、指先が半分隠れていた。
その姿が妙に幼く見えるのに。
さっき俺に見せた顔を思い出して、また下半身が熱くなる。
肩が冷えないように、ずれていた布団をそっと引き上げた。
がもぞりと身じろぎして、俺の胸元に額を擦り寄せてくる。
起きたのかと思って顔を覗き込むが、の睫毛は伏せられたままだった。
疲れたのか、ぐっすり寝ている。
(こっちはまだ、全然落ち着いてねぇのに)
さっきのことが、頭の中で何度も繰り返される。
あの時、の唇が作った形。
声にはならなかった。
言葉にもならなかった。
それでも、俺にはそう見えた。
好き。
そう言おうとしたんじゃないかって。
「……何回期待してんだ、俺は」
ちゃんと聞きたい。
ちゃんと伝えたい。
が何を思って、あんな顔をしたのか。
どうして「俺のため」なんて書いたのか。
どうして、忘れるなんて言ったのか。
全部。
「……起きたら、聞いてほしい」
寝ているに向かって、ほとんど息だけで呟く。
「……好きだ」
布団の中で、の指先が俺のTシャツをきゅっと掴んだ。
偶然なのか、返事なのかは分からない。
お前が何に縛られてるのか。
まだ全部は分からない。
でも、今日したことを後悔させたりしない。
お前が抱え込んできたものも。
お前を縛ってる呪いも。
全部、俺が祓うから。
だから、もう一人で黙って抱えんな。
そう心の中で誓い、を起こさないように抱き寄せる。
腕の中の体温を確かめながら、目を閉じた。
今だけは。
ほんの少しだけでいい。
朝が来るまで、この腕の中から何も奪われなければいいと思った。