• テキストサイズ

【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第3章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ**






どれくらい時間が経ったのか分からない。

部屋の中は、さっきまでとは嘘みたいに静かだった。
聞こえるのは、俺の腕の中でが立てる規則正しい寝息だけ。


俺のTシャツを着て、身体を小さく丸めて眠っている。
袖が少し余って、指先が半分隠れていた。

その姿が妙に幼く見えるのに。
さっき俺に見せた顔を思い出して、また下半身が熱くなる。


肩が冷えないように、ずれていた布団をそっと引き上げた。
がもぞりと身じろぎして、俺の胸元に額を擦り寄せてくる。


起きたのかと思って顔を覗き込むが、の睫毛は伏せられたままだった。
疲れたのか、ぐっすり寝ている。


(こっちはまだ、全然落ち着いてねぇのに)


さっきのことが、頭の中で何度も繰り返される。


あの時、の唇が作った形。


声にはならなかった。
言葉にもならなかった。

それでも、俺にはそう見えた。

好き。
そう言おうとしたんじゃないかって。



「……何回期待してんだ、俺は」



ちゃんと聞きたい。
ちゃんと伝えたい。


が何を思って、あんな顔をしたのか。
どうして「俺のため」なんて書いたのか。
どうして、忘れるなんて言ったのか。

全部。



「……起きたら、聞いてほしい」



寝ているに向かって、ほとんど息だけで呟く。



「……好きだ」



布団の中で、の指先が俺のTシャツをきゅっと掴んだ。
偶然なのか、返事なのかは分からない。


お前が何に縛られてるのか。
まだ全部は分からない。

でも、今日したことを後悔させたりしない。


お前が抱え込んできたものも。
お前を縛ってる呪いも。

全部、俺が祓うから。

だから、もう一人で黙って抱えんな。


そう心の中で誓い、を起こさないように抱き寄せる。
腕の中の体温を確かめながら、目を閉じた。


今だけは。
ほんの少しだけでいい。

朝が来るまで、この腕の中から何も奪われなければいいと思った。
/ 225ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp