第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
「お待たせー」
五条先生が片手を上げて、何事もなかったみたいにこっちへ戻ってくる。
「いやー、電話長引いちゃった」
電話じゃなかっただろ。
女に会ってただろ。
虎杖が「腹減ったー、先生」とぼやき、釘崎もスマホから顔を上げて「私、甘いもの食べたいんだけど」と続ける。
先生は二人に「はいはい」と返しながら、俺の手元を見た。
「あれ、レモンティー? 恵にしては可愛いモン飲んでるじゃん」
「これは、ので……」
「そうなの? 、一口もらうよー」
「へっ」
が返事をするより早く、先生は俺の手からレモンティーを取った。
さっきまで、が口をつけていた缶。
俺が飲むのをためらっていた、それを――先生は当たり前のように口元へ運んだ。
「ん、甘くて美味いね」
「せ、先生……!」
先生が同じ缶に口をつけた瞬間、はみるみる顔を赤くしていく。
さっき、俺が缶を受け取った時とは全然違う。
「、なんで顔赤くしてんの? 熱でもあんの?」
「い、いいえ、なんでも……!」
「ふーん? そ。はい、ごちそうさま」
先生は面白がるように目を細めて、レモンティーの缶をに返した。
は先生が口をつけた飲み口を見つめて、ぱっと手で口元を覆う。
の意識は、簡単に全部先生へ持っていかれた。
俺がどうにか逸らした数分なんて、最初からなかったみたいに。