第1章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を欲しがる**
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五条先生には恩があるし、その実力は信用している……が。
人として尊敬しているかと聞かれたら、絶対に頷けない。
特に、あの人の女性関係に関しては。
俺と津美紀が五条先生に引き取られてから、女性とキスしているところを何度か見かけたことがある。
来る者拒まず、去る者追わず。
誰かを特別扱いしているようで、結局、誰のものにもならない。
子供の前でなにしてんだ、とは思った。
でも、別に俺が口を出すことじゃないし、興味もなかった。
先生が誰と会おうが、誰と何をしようが、俺には関係ない。
ずっと、そう思っていた。
が、あれを見ていなければ。
ある日の任務帰り。
みんなで駅前で伊地知さんの車を待っていたときだ。
五条先生は「ちょっと電話〜」と言って、スマホを耳に当てながらどこかに行った。
本当に電話なのか怪しいところだ。
虎杖は自販機の前で飲み物を選んでいる。
釘崎はスマホを見ながら、限定コスメがどうとか言っていた。
もスマホを触っていたが、視線の先には五条先生がいた。
また見てる。
が五条先生を見ているのは、今に始まったことじゃない。
初めて会った時にはわからなかった。
先生に向ける、あの視線の意味が。
でも、今ならわかる。
は――五条先生が好きだ。
それは、憧れなんて綺麗な言葉だけで片付くものじゃないくらいに。
だから――先生の前に女性が現れた瞬間、嫌な予感がした。
長い茶色の髪に、細いヒール。
派手で、いかにも先生が相手にしそうなタイプ。
女性は先生の腕に触れて、何かを親しげに話しかけている。
二人が何を話しているのかまでは、はっきり聞こえない。
でも、その距離感を見れば、どういう関係なのかくらいはわかる。
不意に、女性が先生の頬に顔を寄せた。
それを見たはスマホをぎゅっと握りしめて、今にも泣きそうな顔をしていた。
(……見なきゃ、いいだろ)
見たところで、傷つくだけだ。
あの人はそういう人間で、今さら変わるわけでもない。
五条先生を好きでいたところで、ろくなことにならない。
これでもわかっただろう。
諦めた方がいいと。
俺が何か言う必要も、する必要もない。
そう思った。
……そう思ったのに。