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【H×H イルミ】黒と白のアリア

第19章 束の間の休符


「ここは王立劇場ですし、貴方も音楽院の学生ではありません」

「ですが、私は教師です」

「場所は関係ありません」

「貴方は才能がある」

ウイングは眼鏡を押し上げた。

「ですが、贔屓はしません」

「……何の話?」

「私の生徒が三日もまともに寝ていなければ、どこであっても休ませます」

「それが私の仕事ですから」

その一言を境に、空気が変わる。穏やかだったウイングの表情から笑みが消えた。

「休みなさい。イルミ君」

「……」

イルミは僅かに視線を外した。

「仕事なら、俺だってそうだ。休めと言われて、はい分かりました、なんて言えない」

ウイングが黙って聞く。
イルミが続ける。

「でも……さっき、一瞬耳が聞こえなくなった」

「“アレ”はまずい」

「だから、アンタに言われる前から今日は早めに切り上げるつもりだった」

「それなら安心です。……ただし」

ウイングは眼鏡の位置を軽く直した。

「寝室に譜面を持ち込むのは禁止ですよ」

「……」

「言うまでもないことですが」

「別にそんなのわかってる」

「そうですか。では私の勘違いということにしておきましょう」

イルミは居心地が悪そうに視線を逸らす。

「君が倒れれば、今度は楽団員が困ります」

イルミはもう一度だけ視線を落とした。そして諦めたように、小さく息を吐く。


「……分かったよ。ウイングさん」


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