第1章 月夜のアンコール
〜ドクター目線〜
それからというものの、シャレムは時々、夜の見張りに立つインディゴの傍らに、護衛かのように訪れるようになっていた。インディゴは来る者拒まずみたいなところがあったし、シャレムはどう思っていたのかドクターにはさっぱり検討がつかないが、オペレーター同士が仲良くしてくれているのならなんでもいいとさえ思っていた。
ただ、あの二人が夜にわざわざ会いに行ってなんの会話をしているのか気になって、ドクターがさり気なく近寄ってみたことがあった。するとなんてことか、二人は何も言葉を交わしていなかったのである。てっきり、同じ方向を見ているからあの場所に侵入者がいたらどう対処するか、程度の会話はしているかとちょっとは期待したというのに。
そんな二人の関係が焦れったいと思ったドクターは、それぞれ別のタイミングで自分の秘書にして互いにどう思っているか探りを入れることにした。名目は適当に「近々同じ戦隊にしようか悩んでいて」とか、そんな感じのことを言って。
「シャレムさんは、とてもいい人だと思います」
予想通り、インディゴは誰でも受け入れるところから普通の回答を貰った。ということは、シャレムも同じような回答かと思っていたら、彼は妙な一言を発したのだ。
「彼女の献身的な一面には、目を張るものがありますね」
確かにインディゴは友人のために毒を飲み干してしまうくらいの健気さがある。だが、インディゴはそれをひけらかすような性格ではなかった。ならなぜ、シャレムはあの無言の夜の世界で、インディゴの内面に気づいたのだろうか? とドクターは不思議でならなかった。そこで思いついた一つの答えは、こうだった。
「もしかして、インディゴに恋心を抱いているんじゃない?」
ドクターの半分イタズラめいた発言は、さすがのシャレムも一瞬動揺したようだった。あとに紡いだ否定の言葉だって、シャレムらしくなく慌てていたし。
「まぁ、恋愛は自由だからとやかく言うつとりはないけど……インディゴはあんな感じだし、アプローチするならシャレムから……だと私は思うね」
と言った私の言葉に、感情の起伏が表情に出づらいシャレムの中でどう響いたかは分からない。ただ、シャレムは少し考え込む素振りをしながら、次には愛想のいい微笑みでお辞儀をし、検討をしてみますね、と本心かどうか分からない受け答えをするだけであった。
