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明日に編んだ舟[明日方舟]

第1章 月夜のアンコール


 その次の日。私は言われた通り、休憩時間に影と遊んでいた場所で、今度はサージュを待っていた。サージュはほとんど時間通りに来たけれど、数分遅れてごめんと謝ってきた。
「いえ、私は待つことには慣れていますから」
 私はお母さんから、灯台守としてどのように忍耐力を持ち続けるかを知っていた。波や風の音を静かに聞いているのだ。空を眺めてボーッとしているのではない。
「全員連れてくるのに時間がかかってしまってね。紹介するよ」
 とサージュは連れてきた子どもの一人を紹介しようとしたが、彼女が先に名乗った。
「一応、私はカノンという名前があるけど、覚えなくていいわよ。いずれ私は、ロドスのオペレーターでコードネームを名乗ることになるんだから」
 そう言って彼女は長い黒髪を後ろに払い、早く始めましょ、と私を鋭く睨んだ気がした。カノンの濃い橙色の瞳が、夕焼けのように美しくも見えた。
「それで、こっちはアルトだ」
 しかしサージュはカノンの態度には慣れているのか、気にせずもう一人の子どもを紹介してくれた。その男の子はカノンとは対称的で、おどおどしているように見えた。
「初めまして! 僕はアルトで……ぎゃっ?!」
 彼が話し始めた瞬間、アルトは変な声を発した。と同時にボルトが抱えている杖が発光していて、髪の毛が急に静電気で逆立っていた。私は自然と、お父さんがよくしてくれているように、アルトの髪も整えてあげなくてはと手を差し伸ばした。けれどもボルトは嫌がるように後ずさりをした。
「ダ、ダメですよ! 僕に触ったら感電しますから……」
「大丈夫ですよ」
 感電というものがなんなのか分からなかった私だったが、お母さんに似て毒の耐性があると聞いていたので、多少ピリッとするくらい平気だと思ったのだ。そんな根拠もない子どもっぽい考え方でアルトに触れると、確かにピリッとしたのだが、無事に触れることは出来たし、いくらかは彼の髪の毛を整えてあげられたので、私はとても満足した心地でいた。
「驚いたな……初対面でアルトに触ろうとする人なんていなかったのに」サージュは驚いたように私を見つめた。「そういえば、君の名前を聞いていなかったね。名前は?」
 その時私は言われて気づいた。自己紹介がまだだったな、と。
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