第1章 月夜のアンコール
「そうなんだ。僕のお父さんは遠視で、僕もその遺伝が受け継がれているって」
サージュも、年齢より大人びた子どもだった。今でも私より年上なのではないかと思うことはあるが、なんと私と同じ年齢なのだ。
「遺伝子……」
逆に私は、大人びているだけで難しい言葉までは詳しくなかった。けど、サージュは顔色一つ変えないまま、似てるってことだよ、と教えてくれて。それから次には、子どもらしい取り引きも始まった。
「僕にも影との遊び方を教えてくれる? 隠れんぼを教えたい子がいるんだ」
「隠れんぼ……?」
その頃の私は、子どもの遊びにも疎かった。
「隠れんぼ、したことないの? やってみようか?」
私はよく分からなかったけれども、うんと頷いてサージュと隠れんぼを始めた。ある程度のルールは聞いたけれども、私の隠れ方がそんなに下手だったのか、すぐ見つかってしまう。次に交代で探す側になるといつまでもサージュが見つからず、最終的にはアーツで光らせて驚かせたところで隠れんぼは強制終了するのがセットとなっていた。
「君のアーツはとても綺麗だ」
サージュは自ら木陰から出てきてそう言った。私は申し訳ない気持ちになっていた。
「あの、隠れんぼにアーツは使わないですよね、すみません、もう一回やり直しましょう」
私だって少しは、隠れんぼの楽しさを知りたかったから。
すると、サージュは柔らかく笑って首を振った。
「いや、そもそも隠れんぼは二人でするようなものじゃないんだ。明日はもっと多くの人と隠れんぼをしよう」
「でも……」
そこで私は、前に「尻尾の色が気色悪い」と言われたことを気にして、自分の尻尾を軽く持ち上げた。サージュには気色悪い尻尾はなく、小さな耳が頭にあるくらいだった。ウルサスの血を濃く引く彼なら当然の見た目だったが、私も尻尾がなければ、なんて思うこともあったのだ。
「大丈夫。また明日ここで会おう」
サージュは私の心配を察したのかどうなのか、そう言ってすぐに立ち去った。私が何か答える余裕もなかったが、明日に学校で別の用事があるというのは、楽しみなことでもあった。