第1章 月夜のアンコール
その数日後、ハニーベリーからルミーにはメンタル的不調は見られないという報告が上がってきたと同時に、聞き取り調査用の書類の隅に「影の先生?」という文字を見て、ドクターはある人物を思い出していた。
ドクターはハイビスカスにルミーはとにかく大丈夫であることを伝え、真っ黒に塗り潰す絵も素直に受け取れるようになっていた。なぜならルミーは恐らく……ほら、次のお手紙には赤いリボンのある闇の絵が届いたのでドクターはもう安心だった。どうやらルミーには、三人目の家族とすっかり仲良くなっていると分かったからだ。
インディゴはというと、彼女も予想通り、ルミーの黒い絵をあまり気にしていないようだった。インディゴはルミーに、誰かに優しくすることは大切であると常に教えていたみたいだし。
だとすると不安要素はシャレムである。シャレムは我が娘からの絵手紙を快く受け取るだろうが、内心はただならぬ劇烈のようになっていたはず。だがドクターは、あまり口出しをする必要はないと考えた。これは家族の問題であり、ルミーだけでなく、インディゴやシャレムがまた一歩成長するきっかけとなると思っていたからだ。
「ドクター、その紙は……?」
執務室にやって来たアーミヤが、ドクターの手にあるルミーの絵手紙を覗き込んだ。
「これはルミーの描いた素敵な絵だよ」
私はルミーの描いた赤いリボンをつけた真っ黒な闇の絵を、空いた棚の隙間に飾ることにした。