第6章 番外編 忘れられない温度
あの頃はまだ“日常”があった。
任務をこなし、帰ってくる場所があり、
誰かの声がして、灯りがあった。
――当たり前のものが、そこに。
「……大倶利伽羅」
名前を呼ばれる。
振り返ると、そこにいる。
白い布を纏った、金の髪。
少しだけ気まずそうに、それでも逃げない目。
――山姥切国広。
「……なんだ」
短く返す。
昔から、変わらない距離感。
馴れ合うつもりはなかった。
そのはずだった。
「……今日、その」
言葉を探すように視線を逸らす。
「少し時間、いいか」
珍しい誘いだった。
少しだけ、間を置く。
断る理由はあったはずなのに。
「……ある」
気づけば、そう答えていた。