第5章 痛みのかたち
「なあ、大倶利伽羅」
名前を呼ぶ。
「それ、“負け”じゃないぞ」
視線だけが少しこちらに動く。
「……何の話だ」
「守れなかった、とか思ってるんだろ」
図星、か。
分かりやすい。
「でも違う。選んだのは、あいつだ」
ヒスイが、自分で。
あの道を。
「お前は“見届けた側”だ」
それは逃げでも誤魔化しでもない。
事実だ。
「……」
沈黙が続いた。
考えてるな。
珍しく。
「ま、納得するかどうかは別だけどな」
くるりと背を向ける。
「俺はもう行くぜ」
手をひらひら振る。
「お前は好きなだけ、そこにいろ」
数歩、歩いてから。
少しだけ振り返る。
「ただし」
にやりと笑う。
「次は、拾うなよ」
それが忠告か、冗談か。
自分でも分からないまま。
その場を後にした。