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【刀剣乱舞】神様に恋した猫【完結】

第5章 痛みのかたち


(猫又視点)

梅雨が開けすぐに夏が来る。
前触れ化のように生暖かい風が吹き鳴く。

あの小僧がいなくなってから、神社は少しだけ静かになった。

「……まったく」

石の上で、尾を揺らす。

「言っただろうに」

壊れるな、と。
泣くな、と。

けれどあいつは――

『好きだから』

そう言って笑った。
愚かで、まっすぐで。
どうしようもない猫だった。

「……だが」

目を細める。

あの神様。
…倶利伽羅龍を肩に刻んだ付喪神、だったか。

今日も来ているな。
何もない場所に。
何もないはずの場所に。

「……残ったのは、あっちか」

くつくつと笑う。

皮肉なものだ。
削れたのは小僧の方。
だが、“残った傷”は向こうにある。

「神様に恋をする、か」

空を見上げる。

「そりゃあ、叶わんさ」

当たり前の話だ。
寿命も、存在も、何もかも違う。
交わるはずがない。

「だが――」

尾が、ゆらりと揺れる。

「一瞬くらいは、触れられる」

それで満足するかどうかは。
その生き物次第。

「あいつは、満足してたな」

最後の顔を思い出す。
消える間際の、あの目。
あれは――

「……悪くない顔だった」

ぽつりと呟く。
しばらく沈黙が続くと風だけが通り過ぎた。

「さて」

ゆっくりと立ち上がる。

「次の迷い猫でも待つかね」

同じことを繰り返すのか。
それとも。
違う何かが来るのか。

それは分からない。
ただひとつ。

「――神様に恋をするなら、覚悟しな」

誰にともなくそう残して。
猫又は、闇の中へと溶けていった。
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