第5章 痛みのかたち
「じゃあなんで来る?」
少しだけ、間。
ほんの一瞬。
それから。
「……静かだからだ」
短い答え。
嘘ではない。
でも、本当でもない。
「へぇ」
くつくつと笑う。
「便利な場所だな。静かで、何もなくて」
わざとらしく肩をすくめる。
「何も残ってないのに、な」
ぴたり、と空気が止まる。
言い過ぎか?
いや、違うな。
これくらいじゃ壊れない。
こいつはもう――
(……壊れてるからな)
しばらく沈黙。
風が吹く。
葉が揺れる。
そして。
「……あいつは」
ぽつりと、こぼれる。
珍しいな、自分から話すなんて。
不覚にも驚いてしまう。
「……最初から、分かっていたのか」
視線は動かない。
あの場所を見たまま。
「どうだろうな」
軽く返す。
「でもまあ、止まらなかったってことは」
少しだけ、真面目な声になる。
「分かってても、行ったんだろ」
それが答えだ。
ヒスイってやつの。
「……」
返事はない。
でも、分かってる顔だ。
ようやく。