第5章 痛みのかたち
「……ヒスイ」
名前を呼ばれる。
優しい声。
少しだけ苦しそうな声。
(……しあわせ)
そう思った瞬間体が崩れた。
光が弾け小さく縮む。
残ったのは――
一匹の猫。
そしてその猫も。
ゆっくりと、薄れていく。
「……おい」
声が落ちる。
ヒスイは、最後の力で顔を上げた。
視界はもうほとんど白い。
それでも。
ちゃんと見えた。
その顔が。
初めて、はっきりと。
感情を持っている顔が。
(……ああ)
これを見たかったのかもしれない。
「……ありがとう」
声にならない声。
でも、確かに伝えた。
そしてヒスイは、消えた。