第5章 痛みのかたち
ヒスイはもう、限界だった。
分かっている。
でも、これでいい。
(……伝えられた)
それだけで、十分だ。
体が軽くなる。
いや、違う。
――薄くなっている。
足元が消えかけている。
でも、怖くはなかった。
ただ一つだけ。
やり残したことがある。
「……ねえ」
声がかすれる。
「もう一回だけ」
視界が揺れる中で、笑う。
「少し触れても、いい?」
子供みたいな願い。
最後のわがまま。
倶利伽羅の手がわずかに動く。
迷いが見えた。
その一瞬が、すべてだった。
(……ああ)
やっぱり、優しい。
だから、好きになった。
手が伸びる。
触れられる。
頭に、そっと。
……凄く、あたたかい。