第4章 見えている奴は、見て見ぬふりをするな。
その声音に、胸の奥がざわつく。
「……どうして」
思わず、問う。
理解できないものに、言葉が出た。
間があって。
静かに返ってくる。
「好きだから」
簡単に。
あまりにも簡単に。
言われてしまった。
言葉が、出ない。
「……触れたいし、声聞きたいし」
続く声は、少しだけ苦しそうで。
「名前、呼ばれたい」
その一つ一つが、重い。
「……それだけでいいの」
違う。
それだけじゃない。
分かっている。
その“それだけ”が、どれだけ重いか。
「……ヒスイ」
名前を呼ぶ。
自然と、出た。
はっとしたのは自分の方だ。
振り返る。
そこにいる。
人の姿のヒスイ。
少し、透けている。
(……もう、限界が近い)