第3章 名前をもらえない距離
この子供の目。
あの猫と、同じだ。
まっすぐで、逃げない。
それでいて――
(……危ういな)
深く、入り込みすぎている。
「名前は?」
「……ヒスイ」
小さく答える声。
「へぇ、いい名前だ」
にっ、と笑う。
「俺は鶴丸国永だ。よろしくな」
軽く手を振る。
ヒスイは、少しだけ戸惑いながらも頷いた。
その様子を横目で見ながら鶴丸はちらりと倶利伽羅を見る。
(……気づいてないな)
完全に無自覚だ。
この状況の意味も。
この子の感情も。
「お前さ」
ぼそりと呟く。
「また、失うぞ」
「……何の話だ」
「いや、なんでもない」
肩をすくめる。
言っても無駄だ。
こいつは、自分で気づくしかない。
だからせいぜい――
(……見ててやるか)
どう転ぶか。
最悪でも見届けるくらいはしてやる。