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【刀剣乱舞】神様に恋した猫【完結】

第3章 名前をもらえない距離


(ヒスイ視点)

息が、浅い。
指先が震える。

(……まだ、大丈夫)

そう言い聞かせる。
でも。

「……顔色、悪いぞ」

倶利伽羅の声。
優しい。
――それが、今は、つらい。

「平気……」

とりあえず、笑う。
うまく笑えているかは分からない。
でも、離れたくなかった。

「……無理はするな」

ぽん、と。
自然と頭に触れられる大かな手。

「っ……」

その瞬間身体が大きく揺れた。
視界が、ぐらりと歪む。

(……だめ)

保てない。
形が、崩れる。

「……おい」

声が遠のく。
触れられている場所だけが、やけに熱い。

(……もう少し)

あと少しだけ。
この時間を。

「……ヒスイ?」

名前を呼ばれる。
初めて、“ちゃんと”。
それが、嬉しくて。

――限界だった。

ふっと、力が抜けると身体がゆっくりと小さく縮んだ。

光が弾けて――
そこにいたのは、一匹の猫。

「……は?」

倶利伽羅の声が止まる。
そして。

「……お前……」

その場へしゃがみこみ、手を伸ばす。
猫のヒスイは、ふらつきながらもその手に寄った。

触れられる。
撫でられる。
いつもと同じ。

でも。

「……そういうことか」

低く、落ちる声。

理解された。
全部じゃない。

でも、繋がった。

「……馬鹿が」

ぽつりと呟かれる。
その声音は――
怒りでも、呆れでもなく。

ほんの少しだけ。
痛みを含んでいた。
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