第2章 かりそめの居場所(大倶利伽羅視点)
(……妙なやつだ)
普通の生き物はもっと慎重だ。
それでもこいつは、ためらいなく寄ってくる。
まるで――
(……最初から、知っているみたいに)
そんな考えをすぐに打ち消す。
ありえない。
ただの猫だ。
しゃがむ。
手を伸ばす。
柔らかい毛並みが、指先に触れる。
「……」
何も言わず撫でる。
猫は目を細め静かに喉を鳴らす。
その音がやけに耳に残る。
(……うるさいな)
静かなはずなのに、妙に“満たされる音”。
それが、気に入らない。
だが――
手は止まらない。
「……お前は、いいな」
ぽつりと、こぼれる。
誰に向けた言葉かも分からない。
「何も知らないでいられる」
猫は答えない。
ただ、そこにいる。
それでいい、と言うように。
しばらくして、手を離す。
猫は少しだけ不満そうにこちらを見る。
「……行く」