第6章 エデンを覗き見る
「そこそこいい時間だぞ?とっくに終わって今コンビニ行ってたとこ」
「そっか。寒いから、風邪引かないようにね」
「花衣も外だろ?」
「うん、店の中じゃ騒がしくて話せないでしょ?」
「戻らなくていいのかよ」
「んー、どうだろ、分かんない。このまま帰っちゃおうかな」
はは、なんだそれ。今度こそちゃんと聞こえた蓮の笑い声に、だってホントのことなんて恥ずかしくて言えない。繋がったら切りたくなくなって、声を聞いたら会いたくなる。
蓮の声は、ふわふわと気持ちよくて、それでいて安心するんだ。
その声で、
「花衣」
今みたいに名前を呼ばれたら、心臓がどきどきして嬉しくて。
ああ、なんだ。
そっか。
あたしは蓮のことが好きなんだって。
初めてちゃんと自覚した。
得も言わぬ不安や恐怖の正体はこれだった。
味わったことのない、甘い甘い感情。
落ちる時って、こんなにあっけないんだ。
なにもないのに、こんなに簡単に好きが湧いてくるんだ。
「れ、」
「おいこら望月。いつまでちんたら話してんだお前は」
「ええ!?ちょ、っと!太刀川さん!?」
あたしを呼ぶ蓮に応えたくて口を開くと、店の扉も同時に開いた。出たきた知ってる顔は、よく見るとぐでんぐでん。