第6章 エデンを覗き見る
「蓮ごめん!また後でれんら、太刀川さん!ちょ、重い!もたれないで下さいってば!」
「まだ浮気中か?」
「はぁ?訳分かんないこと言わないで!」
外に出る前はこんなんじゃなかった。この数十分の間にどんだけ飲んだんだこの人。フラフラと近寄ってきた太刀川さんが、突然あたしの肩に腕を回して、一回りも二回りも大きいその体の全体重を委ねてこられたら、さすがに女のあたしの力じゃ敵わない。
必死に支えながら抗議の言葉を投げつけるも、意味不明な返事が返ってきて、首すじに埋まる太刀川さんの頭をはっ倒したくなりそうだった。
「大丈夫か?」
「ごめん、ホントごめん、後で連絡するから」
「わかった。じゃあな」
思わぬ形で切られた電話に、切らないといけない状況を作った太刀川さんを、恨んだところでなんの効果もない。それよりも、じりじりとのしかかる重さをどうにかしたくて、半分だけ開いていた扉の向こうに視線を飛ばした。
「す、諏訪さん!!」
「………あ?っておま、何やってんだおい!」
「も、むり!早く!!」
「ちょ、ちょっと待て今行くから!あと少し耐えろ!」
不幸中の幸い。
たまたま閉め損ねた扉の突き当たり、座ってた諏訪さんとがっつり目が合って、腹の底から絞り出した声はちゃんと奥まで届いてくれた。
慌てて駆けつけた諏訪さんのおかげで、間一髪、後ろにひっくり返らずに済んだけど、あともう少し遅かったらあたしは確実にこの硬いコンクリートの上で、太刀川さん共々大惨事だ。
諏訪さんに抱えられて、もはや意識もほとんどないこの男。ホントどうしてやろうか。
とりあえずは力任せに、だらしなくへばってるその背中を叩いてやれば、乾いた音が空気に溶けた。