第6章 エデンを覗き見る
自分の気持ちを押し殺して、枠の中でぬるま湯にずっと浸り続けるのか、それともスイッチを入れてモーションをかけた挙げ句に枠の外側へ放り出されて見向きもされなくなるか。この状況じゃ確実に前者を選ぶ。例えそこに俺の望んだものがなくともだ。
「すみません」
「いや」
「太刀川さん、今日ヒマ?」
「なんで?」
「久しぶりに付き合ってあげてもいいですよ、模擬戦」
「なにお前、えらく機嫌がいいな。いつもあれだけ嫌がってんのに」
「機嫌は普通です。やらないならもう帰りますけど」
「誰もやらねーとは言ってないだろ」
嘘つけ。
どこが普通なんだよ。
嬉しそうに、俺には見せたこともない表情で話し込んでただろ。
誰を想って誰のためにあんな顔。
「太刀川さん午後の講義は?」
「一コマだけある」
「じゃあそれ終わったら連絡下さい。あたし今日はもうないんで、適当に時間潰してます」
優しさなのは知ってる。
細く綺麗な指先で椅子を引いて去ってく望月の。俺が何かに悩んでると察知したコイツなりの。
「まいったな」
思わず口を突いて出た独り言。
それは深みにハマりそうな予感がしたからだ。