第6章 エデンを覗き見る
男の人の酒のアテには定番っちゃ定番。女がどうの、セックスがどうの。引っかけた相手が清楚系のわりに凄いエロかっただの、寄ってくる女はケバい奴しかいないだの、しまいには女子の下着の好みまで討論する始末。太刀川さんも大概だけど、紐Tバックに絶賛する諏訪さんも諏訪さんだ。それを横目で、まるで自分とは違う生き物を見ているような風間さんの眉間には皺が増えた気がする。下ネタはいつものことだからいいけど、お願いだから潰れないでね太刀川さん。
「ねぇ、花衣ちゃんはそういう相手いないの?」
「へ?」
「彼氏よ彼氏」
「彼氏、……は、いませんよ」
あ、やば。
このゆるゆるの空気にほだされて、緊張感も薄れてつい口が滑った。投げてきた隣の加古さんを見れば、元々端整な顔立ちの口角が、これまた綺麗に持ち上がって。詳しく聞かせなさいよとばかりに、体ごとあたしに向き直る。
「へぇ、彼氏、は、いないのね」
「は、い」
「じゃあ好きな人はいるんだ?」
「えーっと、」
長くて艶のある明るい髪を、耳にかける仕草が色っぽい。それに座った時から思ってた。この人すごい良い匂いがする。切れ長の瞳で見つめられて、どうなの?とでも言うように。
こんな綺麗な人に言い寄られると、大抵の男はイチコロだよな。女のあたしでも好きになりそうな雰囲気を醸し出す加古さんを、ただただ見つめ返すことしかできないでいると、そんな空気に切り込みを入れたのは太刀川さん。
女子トークにずけずけと入ってくるあたり、やっぱ相当酔ってるなこの人。
「コイツの好きなヤツ?そんなもん俺に決まってるだろ」
「はいはい、太刀川くんは黙っててね。今大事な話ししてるんだから」
「おい望月、お前も言ってやれ。太刀川さんが好きなんですって」
「その意味不明な自信はどこから来るんですか。なんでそう思えるのかほんっと不思議なんですけど」
「お前の愛情はちゃんと伝わってる。だから大丈夫だ、自信持って好きだって言っていいんだぞ?」
「太刀川くんの頭は大丈夫じゃなさそうね」
「ほんとそれです」