第5章 無重力に花は咲く
「でもおっけー出すってことは、花衣さんもまんざらでもない感じなんですよね?」
「んー、どうだろ、こういうの初めてだからあんまよく分かんないんだよね」
「彼氏できるのも時間の問題か~。いいな~」
「柚宇ちゃんそれはちょっと飛躍しすぎだよ」
口は謙虚だが、表情がちぐはぐなことをコイツは分かってて言ってるのか?お前のその顔、誰が見たって脳内お花畑で嬉しそうに緩みきったヤツのそれだぞ?
望月をここで見つけた時の、最初の違和感が漸く合致した。男が絡むとコイツはあんな表情になるのか、なるほどな。
「気になるのか?」
「アイツらがうるさくて集中できないんですよ」
「集中ってお前、端末弄ってるだけだろ」
俺の手中にあるそれを横目で捉えた風間さんが、小さく息を吐いた。見た目とたがわず目敏い人だ。目敏くて敏感で冷静に物事を見極めるその瞳に、今はなぜか映りたくなかった。
「それにうるさいと言うわりには、お前の耳が随分大きくなっているように見えるのは気のせいか?」
「風間さん、相当疲れてんな。任務詰めすぎだろ」
ちょうど今テスト期間中で、普段の倍の任務量に疲労が溜まって幻覚でも見えてんじゃねーの?と、無理やりこじ付けた所でこの人はびくともしないだろうけど。
そりゃ気にはなる。1から10までアイツのその全てを理解しようとは思わないし、寧ろそれやっちまったらただのストーカーだ。望月が誰と関わろうと、誰を懐に入れようと俺がとやかく言う権利なんてこれっぽちもない。
だが、限られた交友関係の中に、どこの馬とも知れないポッと出のヤツがアイツにあんな顔させてると思うと、それはそれでいい気分はしないのも否めない。
なんだこれは。なんでこんな、腹の底がドロドロとドス黒いもんで埋まってくような感覚になるんだよ。
「その人が彼氏になったら紹介してね花衣さん」
「いやだから、まだそんなんじゃないって。しかも紹介って、そういうの恥ずかしいし」
おいおい、なに乗り気になってんだよお前も。他の男を想って嬉しそうに笑うなよ。もしソイツがめちゃくちゃ遊んでるやつだったらどうすんだ?適当に扱われて泣かされて捨てられたらどうすんだ?