第5章 無重力に花は咲く
確かな想いは揺るぎない事実だと信じ込んで。
その上で何の疑いもなく胡座をかいてた自分は、
なんて無様で滑稽なのだろうか。
こんな簡単に崩れるとは思ってもみなかった。
「デート!?」
「ちょ、っと柚宇ちゃん!声おっきいって」
「いやだって、花衣さん男なんてまーったく興味なさげなのに~!びっくりした!」
「あたしは柚宇ちゃんのその声にびっくりしたよ」
ラウンジの隅、国近となにやら真剣に話し込んでる望月の表情が、今日はやけに柔らかいなと思ってた。
午後から初の防衛任務に赴くコイツのことだ、きっとまたガチガチに緊張しているだろうと、ランク戦目当てを装ってわざわざ出向いた俺の労力は水の泡。
話しかける雰囲気でもなく、たまたま最初からいた風間さんの隣で、端末を弄っていた指が止まった。当たり前だが、視線は嬉しそうに話しを聞く国近と、それとは対照的に慌てふためく望月を凝視。アイツらの声も、一言も漏らさないとばかりに全神経が俺の両耳に集中しているのが自分でもわかった。
「で?で?相手は?ここの人?」
「違うよ、ここの人じゃない」
「写真かなんか持ってないんですか~!?」
「ないない、持ってない」
え~見たかった~!女子トークの定番とも言えるやりとりに、この強情で堅物で頑固で色気とは無縁の望月を、勇敢にも誘った奇特な男がいるなら俺だって見てみたい。
望月に対して失礼極まりない思考は、今読まれると確実に数日間は口を聞いてもらえなくなる。それを承知で敢えてそんなことを思った。