第5章 無重力に花は咲く
今からでも遅くない。
悪いことは言わない。
早まるな、やめとけ。
俺なら呆れられることさえあれど、今までお前を適当に扱ったつもりもないし、これからだって………。
………は?
俺は今、何を思った?
………は?
「………マジ、か」
「なんか言ったか?」
「いや、なんも」
無意識に出た言葉を拾われて、なるべく平常心を装って濁してみたものの、気づいてしまった感情は、一度でも溢れ出ると認めてほしくて拍車をかけてくる。
男っ気なんてほとんどない。逆に毛嫌いとまではいかなくとも、それに近しい思いを抱いてた望月の、硬い殻の内側になんなく入った自分はどこかで高を括ってたのか。
付かず離れずの距離で、コイツの隣は俺の席で。自他ともに定着していたその関係を、脅かす存在がすぐそこまで来ている、そんな状況にならないと気づけなかったとは。
バカも甚だしい。
バカすぎて笑いすら込み上げてきそうになる。
「おい太刀川、お前は自分の端末を握り潰す気か?」
「……あぁ、ぼーっとしてた」
「しかもお前、なにをそんなにニヤついてるんだ。気持ち悪いぞ」
「自分のバカさ加減にびびってつい」
悪いが、気でも触れたか?みたいに見てくる風間さんを構ってられるほどできちゃいない。無意識に力が入ってたんだろう。メキメキ鳴いた端末の命を救ってくれたのは有り難いが。トリオン体の今、あと一歩遅けりゃ粉砕していた所だ。
親心だと疑いもかけずに信じ込んだ想いは、蓋を開けてみりゃなんて事ない。それとは別の、それよりも遥かに厄介な知ってる感情だった。でも知りたくはなかった。
リスクの高い領域に飛び込もうとは思えない?違うだろ。飛び込む間もなく勝手に落ちてた。
「風間さんも今日の合同任務入ってたよな、確か」
「だったらなんだ?」
「それ俺と代わってよ」
隣で怪訝な顔をしてる風間さんは、国近と話すアイツから、色んな意味で目が離せなくなった俺を見てふっと笑った。
さて、
どうするかな。