第5章 無重力に花は咲く
「ねぇ出水くん」
「……いやいやいや、無理っす」
「まだなんも言ってないじゃない」
「顔が言ってるから。おれにふらないで。勘弁して」
「なんでよ、中学の数学ぐらいは分かるでしょ?」
「分かんない、つーか忘れてるし」
クッソ逃げられた。あたしの思考はそんなに明け透けだったのか、はたまた出水くんの危機察知能力が高かったのか。駿くんの見てあげて。そう口にする前に全力拒否の姿勢を示す彼は、模擬戦でもしてきまーす。颯爽と出て行った。
滞在時間、僅か数分。うん、いい判断だと思うよ、あたしが逆の立場でもそうするもん。
「望月」
「なんですか」
出水くんがダメとなると、あとは柚宇ちゃんが偶然にもひょっこりと顔を出してくれるのを祈るのみ。早くこの地獄から抜け出したいと、太刀川さんのパソコンの、ひらがなばかりの画面を躊躇いなく全消去した所で、その暗号みたいな文字を打った張本人からお声がかかった。
「お前シフト表もう出したのか?」
「着いてすぐ出してきましたよ」
「ならいい」
「あれって、出した通りの希望、そのまま通るんですか?」
「いや、テスト期間中とかだと人が減るから変動もある。いきなり助っ人任されたり、混成隊で任務出たり」
「いいなー花衣ちゃん。俺も早く任務入りたい」
「駿くんは先にテストでしょ。ほら、手ぇ止まってる」
「はーい」
素直に返事をする駿くんが、学校で配布されたプリントに向き直った。その姿を確認してからあたしはパソコンとにらめっこ。隣の太刀川さんは黙って端末を弄ってる。