第4章 仙籍
「ち、違います、朱衡様! 尚隆様は私を元気づけようとしてくださったんです! それに、私も下界のお祭りをとっても楽しんでしまいました。だから、私も同罪です! 尚隆様だけを怒らないでください!」
「、お前……!」
尚隆が驚いて振り返るがは尚隆の前に一歩出ると、朱衡の静かな怒りの視線を真っ直ぐに受け止めた。
お互いを必死にかばい合おうとする二人の姿を、朱衡はじっと見つめる。
静寂が廊下に満ち、朱衡はふぅ、と長く重いため息を吐き出した。
眼鏡の奥の瞳から、ようやく険しいトゲが抜けていく。
「……お互いにかばい合いですか。全く、主上だけでなく様まで、この阿呆な王の悪影響を受け始めておられるようで、私はこの国の将来が少し心配になってきましたよ」
「おい、阿呆とはなんだ」
「口を慎んでください、主上。……ですが、まぁ、今回のところは様に免じて許しましょう。式典での見事な働きもありましたからね」
朱衡の言葉に、の顔にパッと明るい安堵が広がった。
「本当ですか……!? ありがとうございます、朱衡様!」
「ただし」
朱衡は尚隆をキロリと睨みつける。
「主上の政務三倍は確定です。一文字たりとも減らしはしませんので、明朝は遅れずに執務室へお越しください。……さあ、様。夜風は冷えます、早くお部屋に戻って温かいものでも飲んでお休みください」
「はい! おやすみなさい、朱衡様。……尚隆様も、おやすみなさい!」
は尚隆に嬉しそうに一礼すると耳元で小さく揺れる、秘密のプレゼントの耳飾りを嬉しそうに触りながら、足取り軽く自分の部屋へと走っていった。
残された尚隆は、がっくりと肩を落として朱衡の横を通り過ぎようとする。
「三倍か……鬼だな、朱衡」
「誰のせいで私がこんな夜中に待機させられていたとお思いですか。さあ、主上、部屋までお送りいたします。二度目の逃亡は許しませんよ」
静かな怒りをたたえた有能な官吏に背中を押されながら、尚隆は苦笑しつつも胸の奥では秘密の夜の余韻に、静かに浸るのだった。