第4章 仙籍
こっそり部屋の扉を開けて中に入ると、そこには心配そうに待っていた女官が、まだ火の灯った部屋で控えていた。
の表情がどこか楽しげで、何より耳元に新しい輝きを揺らしているのを見て、女官はすぐにすべてを察したように優しく微笑んだ。
「おかえりなさいませ、様。ずいぶんと、楽しまれたようですね?」
「ただいま戻りました……っ。あの、朱衡様に見つかっちゃって大変だったんですけど、でも、すごく楽しかったです!」
「まぁ、朱衡様に見つかってしまわれたのですか! それは生きた心地がなさらなかったでしょう。ですが、お顔を見ればそんな恐怖も吹き飛ぶくらい、良いお時間だったのがよく分かりますわ。さあ、今日は夜ももう本当に遅いですから、お早めに着替えて寝ましょうね」
女官は手際よくの男装を解き、軽い寝衣へと着替えさせてくれた。
布団に入ったは、枕元にそっと置いた耳飾りを愛おしそうに見つめながら、下界の賑やかな光と尚隆の温かい背中を思い出して、胸をいっぱいにしながら眠りについた。
翌朝、内宮の小部屋で朝餉を摂っていると、身の回りを世話する女官たちが、お茶を注ぎ足しながらニヤニヤと楽しそう笑いながらに寄ってきた。
昨夜の「深夜の逃避行」の話は、すでに付きの女官たちの間ですっかり共有されていたのだ。
「様、昨夜は主上と二人きりで下界の祭りに行かれたんですって? なんだか、とってもいい感じなのではなくて?」
「ええっ!? そ、そんなことないです! 主上はただ、息抜きに連れ出してくださっただけで……」
「あら、ただの楽士相手に、王がわざわざ深夜に変装して忍び込んできたりなさいませんわよ。ねえ?」
「そうですよ! おまけにその耳飾りは昨夜主上からいただいたのでしょう? 宮廷の宝飾品ではない、下界の可愛らしい装飾……そんなの、絶対に特別ですわ!」
女官たちに口々にからかわれ、は持っていた箸を落としそうになりながら、一気に顔を林檎のように真っ赤に染めた。